学習科学

【忘却曲線を活かした英語学習】効率的な復習のタイミングも解説

2021.05.22

赤塚啓紀

塾長

目次

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英語学習を効率よく行いたいなら、人間の記憶の仕組みを理解しておくことが大切です。その仕組みを学ぶ上で、重要な示唆を与えてくれる概念の一つに「忘却曲線」があります。これは簡単に言えば、脳がどのように学んだことを忘れていくかを示したものですが、忘却について知ることによって、記憶にとってより良い学習の方法が見えてくるはずです。

今回は忘却曲線を活かした英語学習について、忘却曲線に関する基本知識や最適な復習のタイミングなどを含めて解説します。これを読んで、ご自身の今日からの英語学習を効率化してみてください。

エビングハウスの忘却曲線とは?

忘却曲線の生みの親は、ドイツの心理学者・エビングハウスです。彼が忘却曲線を提唱したのは19世紀のことですが、100年以上経過した現代でも忘却曲線と言えば「エビングハウスの忘却曲線」が第一に語られます。

以下ではその有名なエビングハウスの忘却曲線と、その関連研究について解説します。忘却曲線に関する入門的な内容になっているので、まだ忘却曲線を知らない英語学習者の方はぜひお読みください。

時間の経過とともに人間は覚えたことを忘れていく

エビングハウスは人間の「忘却」に注目し、自分自身を被験者にしてある実験を行いました。それは「WID」「ZOF」などの子音・母音・子音からなる無意味な語を暗記し、一定時間の経過を待ったあと、再びそれらを暗記して、最初と比べて学習時間がどれだけ短くなるかを調べるというものです。この実験により、二度目の学習のタイミングと時間の節約率に関して、以下のようなデータが得られました。

・20分後の節約率は58%
・1時間後の節約率は44%
・9時間後の節約率は35%
・1日後の節約率は34%
・2日後の節約率は27%
・6日後の節約率は25%
・1ヶ月後の節約率は21%

ちなみに節約率とは、文字通り、どのくらい学習時間を節約できたかを示す割合のことです。例えば、節約率80%は、最初に10分かけて覚えたところを、2回目は2分で覚えられた状況のことを意味します。上記の結果をもとに、時間を横軸、節約率を縦軸にグラフを作ると、急な滑り台のような線が現れます。これが「エビングハウスの忘却曲線」です。

なお、この実験に関して注意すべきこととしては、エビングハウスの忘却曲線はあくまで節約率のグラフであり、記憶量の減少を意味するものでないことが挙げられます。つまり、節約率20%とは、2回目の学習時間が2割減したとの意味であって、10個あった語のうちの8個を忘れていたとの意味ではないということです。

しかし、時間の経過による記憶量の減少が、節約率低下の要因となっていることは容易に推測できることから、人間の脳は時間が経てば経つほど、学んだことを忘れていくとの解釈は間違っていません。

復習しないと2日目には5割以上を忘れてしまう

ウォータールー大学公式サイトの忘却曲線を解説したページによると、1時間の講義を受けて、その後全く復習をしないと、2日後には習った内容の50~80%を忘れてしまうそうです。時間が経過すると、さらに忘却は進んでいき、7日後から1ヶ月後までの間に、残るのは学習内容の2~3%になります。定期テスト前に一夜漬けをする生徒が、「こんなこと習った覚えはない」と感じるのは、実際に教わっていないのではなく、そのほとんどを忘れてしまっているのです。

オンライン英会話を受講したり、参考書で英文法を勉強したりすることがある英語学習者の方は、このことをよく覚えておかなければなりません。もしあなたが月に1回程度しか学習せず、間に全く復習をしないならば、その学習はほぼ身についていない可能性があります。

忘却曲線はリセットできる

エビングハウスは、すでに知っている物事の上に追加の内容を暗記していく場合、情報を思い出すのがより簡単であり、復習をするたびに忘却曲線は緩やかになっていくことを発見しました。この発見は、英語学習を継続的に行ったり、繰り返し復習をしたりすることで、記憶の定着率が高まっていくことを示唆しています。

また後代の研究では、学んだ内容をおさらいすることで忘却曲線をリセットでき、それをするのに最適な復習のタイミングは24時間以内であることが提唱されています。

さらに再びウォータールー大学の公式サイトによると、講義を受けてから24時間以内に10分間の復習をすると、忘却曲線はほぼ100%の状態に回復するようです。加えて7日後までに5分間、1ヶ月後までに2~4分間のおさらいをすることで、同様に忘却曲線をリセットできると言及されています。

忘却曲線を活かした効率的な英語学習法とは?

英語学習者が知っておくべき忘却曲線のポイントは、人間の脳は復習をしないと、学習した内容の大半を忘れてしまうということです。これを踏まえて、以下では忘却曲線を活用した効率的な英語学習について解説します。

英語学習には反復が欠かせない

英語学習においては、様々なことを覚えなければなりません。英単語や英文法を暗記することはもちろん、会話においてはレスポンスの仕方を覚えたり、入試では解き方を体に染み込ませたりすることも必要です。

しかし、上述した忘却曲線の解説の通り、人間は1回の学習で習ったことを全て記憶することはできません。2日もすれば、学んだことの大半を忘れてしまいます。そのため、英語学習には反復が欠かせません。同じようなことを繰り返し学習していく中で、徐々に知識やスキルを記憶していくとのイメージを持ちましょう。

効率的な復習のタイミングとは

忘却曲線の研究では、曲線をリセットするのに最適な復習のタイミングは、学習から24時間以内とされています。そのため、勉強してから1日以内のおさらいはマストです。

また24時間以内に10分間、1週間以内に5分間、1ヶ月以内に2~4分間の復習をそれぞれ行うと、記憶を回復できるとの研究報告もあります。よって1週間以内、1ヶ月以内の復習も取り入れると良いでしょう。記憶力には個人差があり、年齢によっても異なるので、もう少し復習の機会を増やしても構いません。例えば、2週間後などがおすすめです。

忘却曲線を意識した英単語の覚え方の例を紹介

1日以内、1週間以内、1ヶ月以内に復習を行う、忘却曲線を意識した英単語の覚え方の一例を紹介します。この例では、1週間目、2週間目、5週間目に学習を行います。

まず1週間目の初日、単語帳をめくって100個の単語を暗記しましょう。続いて2日目には、前日の100個と新しい100個を覚えます。3~6日目にも同様の学習を行ってください。そして7日目には、6日目の100単語と初日の100単語の復習をします。ここまでで600単語の新規学習と1回目の復習が終わり、初日の100単語に関しては2回目の復習も完了です。

2週間目と5週間目に関しては、1日200単語ずつ復習をしていきましょう。そうすれば無駄なく忘却曲線に基づいた復習ができるため、1ヶ月後には600単語のうちの多くを覚えられていることでしょう。またこの学習と並行して、3週間目、4週間目、7週間目にも新たな600単語の学習・復習を行えば、学習開始から7週間後には1,200単語を習得できることになります。

忘却曲線を活かした英語学習のコツとは?

以下では忘却曲線を意識した英語学習に関する、具体的なポイントを4つ紹介します。

1回1回の暗記の質にこだわりすぎない

忘却曲線の研究が示唆する重要な事柄は、1回学習しただけでは学んだ内容を完璧に記憶することはできないということです。勉強したことを高いレベルで記憶に定着させるには、反復学習をしなければなりません。そのため、英語学習では、無理に全てを覚えようとしないことを意識しましょう。

例えば、単語一つひとつの意味を細かく暗記しようとしたり、文法書を隅から隅まで頭に入れようとしたりする必要はありません。人間の記憶が忘却曲線を辿る以上、そうした暗記は不可能です。そうではなくて、繰り返し学習していくことで、徐々に記憶の完成度が上がっていくようなイメージを持ってください。

24時間以内に必ず一回復習作業を入れる

忘却曲線を意識し、効率よく知識を記憶していくために最も重要なのは、24時間以内の復習です。このタイミングを逃してしまうと定着率がグッと落ちてしまうので、まずは1日以内におさらいする習慣をつけましょう。

例えば、毎晩その日の学習内容を復習する、英会話教室に行った日は晩に授業のおさらいをするなどの癖をつけるのがおすすめです。

長期的な視野で英語学習を考える

忘却曲線を踏まえると、短期的に英語学習を完了させるのは不可能だと言えます。なぜなら、たとえ記憶の繋ぎ止めに最適な24時間以内の復習をしたとしても、そこからまた忘却曲線は下降していき、それ以降復習をしないと、やがては覚えたことの大半を忘れてしまうからです。1週間後、2週間後のおさらいと入れたとしても状況はあまり変わりません。復習をやめてしまえば、いずれはほとんどを忘れてしまうでしょう。

そのため、英語学習を成功させるには、長期的な視座が必要です。コツコツと学習を継続し、英語の記憶を繋ぎ止めていかなければなりません。ちなみに人間の脳には、必要なことを記憶し続け、不要なことを忘れるという習性があります。よって英語学習を地道に続け、脳に「英語の知識は必要なんだ」と思わせることも重要です。日本人が日本語を忘れないように、日常生活に英語学習を浸透させれば、英語の知識も忘れ難い長期記憶となるでしょう。

暗記に意味を持たせるように工夫

エビングハウスの忘却曲線において、節約率が急速に低下した要因として、彼が無意味な語を覚えようとしたことが指摘されています。「WID」「ZOF」といった意味のない語が、「WIND」や「ZOO」などの有意味な単語であれば、状況はまた違ったでしょう。

一般的に人間は、無意味な言葉の羅列より、意味のある事柄のほうが覚えやすいです。そのため、効率的に英語学習を進めるには、意味を意識することが大切です。例えば、単語を機械的に覚えようとするのではなく、文脈の中での暗記を試みたり、用法や例文を一緒に見たりするのが良いでしょう。

またデジタル教材でなく、紙のテキストを使うのもおすすめです。「単語帳のあのページに載っていたから、意味はたしか~」といったように、思わぬ効用が得られる場合があります。さらに語呂合わせなども、意味を意識した記憶だと言えるでしょう。

まとめ

忘却曲線の研究が示唆する本質は、人間が記憶を定着させるには復習が必要であることです。このことを英語学習に応用すれば、英語力を高めるには反復学習が重要だという答えが得られます。特に学習から24時間以内の再学習は大事なので、今日の勉強から取り入れていきましょう。また人間の脳は覚えたことの大半を忘れる仕組みになっているため、コツコツ気長に英語学習を継続しようという心がけも大切です。

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