すでに20年以上になりますが、私はいわゆる大手進学塾で中学受験を志す子どもたちの国語指導に携わってまいりまし た。その経験の中で真っ先に取り組まなくてはならないと感じたことは、子どもたちが国語という科目の本質について十分に理解しないまま、漠然と文章に向かい問題を「消化」しようとする姿勢です。

ご存じのように、ほとんどの国語の文章題には「次の文章を読んで」「後の問に答えなさい」といった内容の決まり文句が冒頭に付されています。ほとんどの子どもたちはまったく気にもとめませんが、この決まり文句の中に、はしなくも国語の本質が表れています。すなわち、文章を「読む」ことを前提として初めて問題を「解く」ことができるという国語の根幹をなす構造がこの短い文のなかに示されているのです。そして、「読む」ことはまさに他者からの情報を理解して受け取ることであり、「解く」ことは作問者からの要求を読み取ったうえ、自分の判断を他者(採点者)にわかりやすく伝達することであって、ここに人生のあらゆるところで必須となる「コミュニケーション」の基本が組み込まれているといえましょう。

ところが、多くの子どもたちが授業やテストにおいて国語の問題に取り組む際、このような国語に対する正しい認識を持つことなく、あたかもクイズの ように、ひとつひとつの問題に対する答を出すことができればよいという、悪しき結果主義に陥っています。当然のことながら、国語の本質を知りつくした難関中学はこのような付け焼き刃のような力では対処できない問題をぶつけてきます。本当に文章(他者)のいいたいことを理解し、さらに、設問の意図をていねいに読み込んでくれる子どもを選別できる問題によって子どもたちの国語力の真贋を見抜いてしまうのです。徒に問題を数多く解くだけでは真の国語力を身につけることはできません。質的な変化が必要なのです。

コミュニケーションの本質に根ざす国語の力をつけていくためには、「文章を読む」こと、「問題を解く」こと、さらには「解答用紙に表現する」ことといった個々の「プロセス」に目を向けて磨いていかなければならないことになります。そのうえで、「読む」ためにはどのような意識を持ち、どのような手段をもって文章に向かっていけばよいのか、また「解く」ためには設問に対する意識をどのように持ち、どのような手段をもって設問の意図を キャッチしていけばよいのかという考慮が必要になるのですが、この点大きな塾にあっても指導方法はバラバラで、単純に文章の構成を解説するだけの 授業や答案用紙のみに赤ペンで簡単なコメントや赤入れが施された添削がいまだに指導の大勢を占めているのが現状です。

実際に文章を読んだり、問題を解いたりする「プロセス」に立ち入って指導するにあたっては、子どもたちがどのような意識を持って文章を読んでいるかをチェックするために、テキストやテストの問題冊子の文章にどのように取り組んでいるか、また、設問のどのあたりに意識を向けたか(向けていなかったか)という点までの詳細な確認が必要となります。そして、現状に多くの問題点があれば、どのように読み、考え、また知識を補充するかといっ た具体的かつ分析的なアドバイスを、子どもたち一人一人の学習状況に即して与えていかなければなりません。

私はこのような観点から、授業外の指導として子どもたちにノートのみならず、文章が掲載されている過去問題やテスト冊子を一緒に提出させ、手を動 かして考える習慣、自らのミスの原因を見つけ出し、自ら対処することができるようなコメント入れやアドバイスを長く行ってきました。その結果、子どもたちの国語という科目への意識に大きな変化が芽生え、文章や設問に対する姿勢が大きく変わりました。思考プロセスが深まった当然の結果として例年の入学試験でも目覚ましい成果を収めることができました。
しかしながら、授業外で綿密に子どもたちの学習資料をチェックすることには時間的な限界もあり、本来の授業のコマ数を減らして自分なりに指導の質と深度をさらに上げようとすると他の教室や授業担当者との間で不公平感も生じてしまい、大きな組織の中で均質なサービスを提供しなければならないというもどかしさもあります。そんな悩みの中で、新しい学習支援サービスの必要性を強く感じました。

以上が、本サービスを立ち上げるにいたった経緯ということになりますが、私の国語に対する考え方および指導の方針の背景につきましては、拙著『学び方を変えれば国語はグングン伸びる!』にまとめてあります。国語を学習するうえでの重要なポイントを111の項目によって詳述したため、200ページの大部となってしまいましたが、目次だけでもご覧になって 興味のあるところだけでも目を通していただきたく思います。また、なぜ学習素材として過去問題集を用いるのかという点につきましては第76講 (125ページ)で説明しております。

拙著『学び方を変えれば国語はグングン伸びる!』につきましては、 スタディ・ラボSHOPからもお求めいただけます。ご高覧いただき、お子さまの国語学習の一助としていただければ幸いです。

平成26年吉日 Mr.Saemoto