学習科学

協調学習(協働学習)とは何か?メリットデメリットを解説

2021.06.21

赤塚啓紀

所長

目次

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協調学習(協働学習)とは何か?

協調学習(協働学習)とはどのようなものなのでしょうか。

協調学習(協働学習)の定義

協調学習とは、子どもたち同士が学び合い、ともに1つの課題を乗り越える学習形態です。文部科学省によって推進され、広く知られるようになりました。 従来の学びと異なるのは、子どもたち同士の関わりに主眼が置かれている点です。「教師対大勢の生徒」という構図ではなく、子どもたち同士が向き合って意見を出し合い学びます。

協調学習(協働学習)の具体例

具体的には、次のような学習形態が協調学習に該当します。

・ディスカッション:複数人で意見を出し合い、より良い結論を導き出す活動 ・ディベート:ある事柄について反対派と賛成派に分かれ、意見を闘わせる活動 ・ケーススタディ:具体的な事例を考察し知見を得る学習 ・ロールプレイング:役割を演じることで問題解決能力を養う活動 ・グループ発表:調べ学習などにおいてグループで発表する活動 ・問題演習:グループで意見交換しながら数学などの問題を解く勉強 ・共同制作:グループで1つの制作物を作成する活動

CSCLって何?

CSCLは「Computer Supported Collaborative Learning」の略で、日本語に訳すと「コンピュータに支えられた協働学習」となります。その名のとおり、コンピュータを使って協働学習することを指す概念です。 たとえば、協働学習ではタブレットが使われることがあります。子どもたちがタブレットに意見を書いて交流するために使われます。これもCSCLの1つと言えるでしょう。

そのほかにも、以下のITツールが使われることがあります。

・チャット:文章のやり取りによる意見交換 ・ビデオ会議システム:遠隔地同士でも互いの顔を見ながら議論可能

協調学習(協働学習)が注目されている背景・理由

協調学習(協働学習)はどのような理由で注目されるようになったのでしょうか。

アクティブラーニングの一環として注目

一昔前は、学校で学んだ知識は一生涯に渡って使えるものでした。時代の変化が緩やかで、急激な環境の変化に対する対応能力はそこまで重視されていなかったのです。

ところが、今の時代にこの考え方は通用しません。学校で学んだ知識はやがて古くなり、それだけでは解決できない問題に立ち向かわなければならなくなりました。

現代の学びで重要なのは、自ら主体的に学ぶ姿勢を身に付けることです。これを目標として、アクティブラーニングが注目されるようになりました。アクティブラーニングとは、従来の受動的な知識の獲得ではなく、学習者の積極的な学びという概念を指す言葉です。

そして、アクティブラーニングの一環として協調学習も注目されるようになっています。協調学習は他の学習者と協力して答えを出さなければならないという特性上、必然的に積極的な姿勢が養われます。

ICT環境の整備によって促進

実は、協調学習はこの概念が生まれる前から存在していました。たとえば、小学生の時にグループで模造紙に調べた内容をまとめ、発表した経験がある人は多いでしょう。これも、生徒たちが自ら協力し1つのことを成し遂げるものであるため、協調学習の1つと言えます。

ところが、従来の協調学習には「メンバーが1つの場所に集まらなければならない」という制約がありました。休日に一緒に調べ学習をしようにも、遠くに住んでいる子どもは参加するのが難しいことがあります。このような地理的な壁が、円滑な協調学習を拒んでいました。

一方、今やその壁は取り払われつつあります。ICT環境が整備され、時間や場所の制約を気にすることなく協働で活動できるようになりました。たとえば、ビデオ会議システムを使えば、遠隔地でも顔を見ながら話し合えます。また、インターネット上で文章や画像を一緒に取り扱えるようなシステムも珍しくなく、共同で制作物を作ることもできます。

協調学習(協働学習)のメリット

続いて、協働学習のメリットを具体的に見ていきましょう。

対人能力を養える

一般的な授業では、対人能力を養える場面があまりありません。せっかく教室に集まっていても、ただ教師の話を聞いたり問題を解いたりするだけで、子ども同士で問題に取り組む機会が少なくなります。

しかし、協調学習ではグループを作って話し合いながら学習を進めます。自分の意見を出すと同時に他者の意見を取り入れて問題解決を目指さなければなりません。こうした過程で、複数人で1つの問題に取り組むためのコミュニケーションを養えます。

問題解決能力を養える

社会に出てから直面する問題は、簡単には正解が見つからないものばかりです。1人で考え込んでいるだけでは解決しないこともあります。特に、職場における課題となれば、関係者との協力は避けては通れないでしょう。

協調学習を行えば、複数人で意見を出し合い、1つの問題に粘り強く向き合う力が身に付きます。複数の視点から問題を見つめ、多角的に解決を目指す姿勢を養えるでしょう。

学習意欲が高まる

自然と学習意欲が湧いてくるのなら、それに越したことはないでしょう。しかし、実際には勉強は多くの子どもたちにとって退屈で、簡単にやる気の出るものではありません。

しかし、周りの子どもたちと一緒に学ぶのなら話は別です。必然的に周囲から刺激を受けることになるうえ、むしろ積極的にならなければ居心地が悪く感じられることもあります。結果的に、積極的に学ぶ意欲の向上が期待できます。

自信が湧く

自信というのは、他者とのかかわりの中で育まれていくものです。人から認められれば自信が湧きますし、その機会がなければ自信は育ちません。

協調学習では、自分の意見を誰かに聞いてもらう機会が多くなります。そのため、結果的に自分の意見を認めてもらえる機会も増加し、子どもたちは自信を持てるようになります。

協調学習(協働学習)のデメリット

協調学習(協働学習)にはデメリットもあります。

教師の負担が大きい

従来の一方的な授業では、教師はカリキュラムに従って仕事をします。教えるべきことは事前に決められているため、それに沿って指導を行えば良いのです。

しかし、協調学習として子どもたちの自由な意見交換や発表を授業に取り入れる場合、事前に想定できないことが起きることもあります。その場合、教師は臨機応変に対応しなければなりませんが、この負担は小さなものではありません。指導に熟練した教師でなければ、適切な対応ができないこともあります。

ICT環境の整備が大変

タブレットなどを用いて協調学習を行う場合、ICT環境の整備が必要です。子どもたちに必要なツールが適切に行き渡るようにするのはもちろんのこと、教師もある程度ITツールの利用に習熟していなければなりません。従来の授業に加えて新しく負担が増えるため、多忙な現場での導入は難しいこともあります。

能力差のカバーが必要

グループディスカッションなどにおいて子どもたち同士が意見を出し合う場合、しっかりと考えて意見を言える子どもと、そうでない子どもが出てきます。能力差があると適切な話し合いが展開されず、話に付いていけない子どもは疎外感を感じかねません。これをどのようにカバーするのかについても、教師の臨機応変な対応が求められます。

まとめ

協調学習(協働学習)は、子どもたち同士がコミュニケーションを通じて1つの問題に取り組むことで、思考力や対人能力を育てる学習形態です。アクティブラーニングの1形態として注目されています。

子どもたちは将来、自分たちの力でさまざまな問題を解決していかなければなりません。まだまだ課題も多い協調学習ですが、主体的な学びを支援し、子どもたちの力を育てていくことが大切です。

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